研究員の個別テーマ
<ジャポニカス酵母菌を材料とした染色体分配の研究> 青木敬太 研究員
ジャポニカス酵母菌を材料とした染色体分配の研究
仁木研究室では、大腸菌、酵母菌という単細胞モデル生物を使って、染色体分配の仕組みの解明を試みています。酵母菌は従来から用いられてきた出芽酵母菌や分裂酵母菌ではなく、スキゾサッカロミセス・ジャポニカスという新しい分裂酵母菌を対象にしています。ジャポニカス酵母菌は、従来の酵母菌に比べて染色体のサイズは変わらず細胞が大きいため、染色体の動態が顕微鏡下でより詳しく観察できるという利点があります。また、酵母などの下等な真核細胞では、核膜は核分裂の際に壊れずに分離するのが普通ですが、ジャポニカス酵母では核膜は破れるように分離するという特徴があります。我々はこれらの特徴を探求する目的で、種々の温度感受性変異株を取得しています。変異株の中には、分裂期停止を示す株、染色体の動態に異常を示す株、核膜の破れの少ない株などがありました。さらに最近、当研究室では、ジャポニカス酵母菌下で働くベクター系や、次世代シークエンス技術を用いた解析も確立しつつあります。今後これらの技術を用いて、変異株の解析を進めようと考えています。
<染色体の複製開始制御> 野崎晋五 研究員
染色体の複製開始制御
細胞が増殖するためには染色体DNAが正確に複製されなければなりません。大腸菌では、DnaAタンパク質が染色体上の複製起点oriCに集合することが引き金となって複製開始が起こります。この開始反応は一回の細胞周期の中で決まった時期に一度だけ起こるように厳密に制御されています。最近の研究によりいくつかの開始制御機構及び因子が明らかになってきていますが、まだ不明な点が多く残されています。私たちは大腸菌の細胞内でのDnaAタンパク質の局在の制御という観点から、複製開始の制御機構の解明を目指しています。
<ジャポニカス分裂酵母の菌糸に見られる光応答現象> 岡本尚 研究員
ジャポニカス分裂酵母の菌糸に見られる光応答現象
ジャポニカス分裂酵母(Schizosaccharomycesjaponicus)は、栄養ストレスやDNA損傷ストレスに応答して菌糸を誘導する事ができる二形性酵母です。この点は他の分裂酵母と異なります。菌糸は寒天培地上での誘導時に、酵母型細胞のコロニーを中心に放射状に菌糸を伸長させます。そのとき、菌糸は明暗の差の刺激に応答して同心円の縞をつくる事が見いだされます。私たちは、その縞が細胞分裂の頻度の違いにより出来ている事を、菌糸の細胞観察により明らかにしました。さらに、アカパンカビにおいて光応答に関与する遺伝子として知られるWC-1およびWC-2ファミリーの遺伝子の破壊株を作製し、それらが明暗の刺激に応答しない事を見いだしました。これにより、私たちは酵母で初めて光応答現象があることを発見し、WC-1、WC-2ファミリーの遺伝子が関与している事を遺伝学的に明らかにしました。この現象の同調的な細胞分裂制御のしくみを明らかにしていきたいと考えています。
国立遺伝学研究所 系統生物研究センター 原核生物遺伝研究室(仁木研究室)
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